我が家でトンカツを「シュニッツェル」と呼ぶようになったわけー欧州トンカツ巡り
プロフィール欄では「割と色々協力的」と、19日の記事では「人様の調理にさらりと文句」を言うが、インスタント麺は「ちょうど良い茹で上がり」に調理することができ、「ドリップコーヒーも夫が淹れた方がおいしい」と紹介されている夫です。
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今回は、「シュニッツェルがうまい!」と夜中に叫んだだけの話を紹介した14日の記事の追記です。
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夜中に叫んだだけの話になぜ続編があるのか。答えは今回の記事にあります。
「トンカツ」じゃなくて「シュニッツェル」
シュニッツェルとは、ドイツやオーストリアの肉料理のこと。
ドイツでは豚肉が多く、ウィーンでは子牛を使うことが普通らしい(豚もあるようですが)。
「ドイツ風トンカツ」と呼ばれることもあるようです(同じように「ウィーン風トンカツ」とも)。
我が家の「シュニッツェル」は妻が作ります。
素材は豚肉。
ここまで読んでくれた賢明なあなたはこう思うでしょう。「それ、トンカツじゃねえか」と。
でも、うちでは「シュニッツェル」と呼びます。
きっかけは、妻のエリザベート(シシィ)好きが高じて実現した数年前のウイーン旅行です。
妻「シュニッツェルが食べたい」
妻は成田に向かう国内線に乗る前から「シュニッツェルが食べたい」。
なんなら旅行の計画を立てている時点で「シュニッツェルが食べたい」。
フランクフルト空港に着いてからは当然ずっと「シュニッツェルが食べたい」。
ドイツやオーストリアに旅行経験があった夫はそのたびに、「ただのトンカツだよ」。
そういうわけで現地初の食事はシュニッツェルでした。
薄め肉はキツネ色にカラッと揚がり(揚げ焼き?)、衣サクサク。
直径30センチはあろうかという大きな皿に盛り付けられていて、レモンをたらして食べます。
妻、パクリ。そのまま数口食べた後、「何か違う」とでも言うような表情。
夫は心の中で、「ほらね。だって、ただのトンカツだもの」。
妻にとって初めてのヨーロッパ。憧れのヨーロッパ。洋食の本場。シュニッツェルの本場。と期待値がどんどん膨らんでいたのかもしれません。
味覚インフレ?
一方、夫には数回のヨーロッパ渡航経験がありました。ヨーロッパの食事はどこか大味。何を食べてもどこか味付けが大雑把。例えばパスタなら、日本で食べた方がおいしいのではと思うぐらいです。(当然、店のランクはヨーロッパ旅行で気合入れて入るレストランのほうが高いです。給仕がぱりっとしたベストみたいなの着て、「へーい」ってメニューを持ってきます)
ドイツのご飯っておいしいのよ。ジャガイモ食べているだけなのにおいしいの。日本のジャガイモとは違うのよ!ジャガイモじゃないみたい!
夫は、初めてヨーロッパ旅行をするかしないかのころ、渡航ベテランからこんな俗説をよく聞きました。
半信半疑だった夫は渡航後、確信に至りました。「いや、ジャガイモはジャガイモです」と。渡航体験が隠し味になり、味覚インフレが起こっているのではないですか、と。
もともと妻は少食。大皿はほとんどはトンカツ、ではなくシュニッツェルで埋まっています。
残すのはもったいないので、私がたいらげました。
食事を終えた私たちは店を出ました。
「この店がいまいちだったのかな。本当においしいシュニッツェルはここではないどこかにあるんじゃないかな」
妻は歩きながらつぶやき続けました。季節は真冬。吐く息はすぐに白くなります。
「本当の」シュニッツェル
こうして、「本当においしいシュニッツェル探し」が始まりました。
レストランに入ると注文はシュニッツェル。
直径30センチの大皿。カラッとキツネ色。衣サクサク。レモンをかけてパクリ。
「何か違う」。妻の表情。
「だってトンカツだもの」。夫の心の声。
少食の妻。
たいらげる夫。
2週間程度の旅行はこの繰り返しでした。
変わらないのは妻の熱意。
変わったのは夫の体形でした。
旅行終盤。
妻が悟ったように言いました。
「これなら私が作った方がおいしいんじゃないかな」
「シュニッツェル大臣」誕生
帰国後、夫婦はスーパーマーケットにしょうが焼き用の豚肉を買いにいきました。
妻が味付けをし、溶き卵にくぐらせ、パン粉で覆い、熱した油に投入しました。
直径20センチの皿。カラッとキツネ色。衣サクサク。レモン汁をかけてパクリ。
「ほら、私が作った方がおいしいじゃん!」
「はい。あまり油っぽくないし、こっちの方がおいしい」
それ以来、我が家のシュニッツェル大臣は妻です。